「補助金が使えるなら、工事をお願いしたい」。リフォームや店舗・工場の建築では、施主のこうした声が少なくありません。補助金の情報を工事の見積もりと一緒に出せる建設会社は、価格だけの比較から抜け出しやすく、受注率や単価の向上につながります。
この記事では、顧客に「工事+補助金」をセットで提案したい建設会社に向けて、まず押さえておきたい補助金の種類と、提案前に知っておくべきルールを整理します。
補助金の内容は年度や公募回ごとに変わります。本記事は2026年10月時点の公表情報をもとにしています。提案の際は必ず各制度の公式情報をご確認ください。
補助金と助成金の違い
| 補助金 | 助成金 | |
|---|---|---|
| 主な所管 | 経済産業省・国土交通省・環境省・自治体など | 厚生労働省(雇用・人材関係) |
| 受給の決まり方 | 審査・予算の範囲内。要件を満たしても採択されないことがある | 要件を満たせば原則として受給できる |
| 建設会社との関わり | 施主の工事費用に使えるものが多い | 主に自社の雇用・人材育成に使う |
施主への提案で使うのは、主に「補助金」です。補助金は予算の上限に達すると締め切られ、審査があるものは不採択もありうる、という前提で説明することが大切です。
建設会社が押さえたい補助金は大きく3系統
| 系統 | 主な対象の施主 | 代表的な制度 |
|---|---|---|
| ① 国の住宅向け補助金 | 個人の住宅所有者・新築の建築主 | 住宅省エネ2026キャンペーン(みらいエコ住宅・先進的窓リノベ・給湯省エネ) |
| ② 国の事業者向け補助金 | 中小企業・小規模事業者 | 中小企業成長加速化補助金、中小企業新事業進出補助金 など |
| ③ 自治体の補助金 | 地域の住民・事業者 | 耐震診断・耐震改修、住宅リフォーム、ブロック塀撤去、空き家改修 など |
① 住宅向け:住宅省エネ2026キャンペーン
国土交通省・経済産業省・環境省の3省が連携して実施している、住宅の省エネ化を支援する補助事業です。新築とリフォームの両方が対象で、リフォーム会社・工務店にとって最も身近な補助金です。
| 事業名 | 主な対象工事 | 補助額の目安(上限) |
|---|---|---|
| みらいエコ住宅2026事業 | 新築:GX志向型住宅・長期優良住宅・ZEH水準住宅 リフォーム:断熱改修やエコ住宅設備の設置など | 新築:GX志向型 110万円/戸、長期優良 最大95万円/戸、ZEH水準 最大55万円/戸(寒冷地は加算) リフォーム:築年数と改修後の性能に応じて最大100万円/戸 |
| 先進的窓リノベ2026事業 | 高性能な断熱窓への改修(内窓・外窓・ガラス交換など) | 最大100万円/戸 |
| 給湯省エネ2026事業 | 高効率給湯器(ヒートポンプ給湯機など)の設置 | 最大17万円/台 |
| 賃貸集合給湯省エネ2026事業 | 既存賃貸集合住宅の給湯器(エコジョーズ等)の取替 | 制度の定めによる |
建設会社が知っておくべきポイント
- 申請するのは施主ではなく事業者です。あらかじめ「住宅省エネ支援事業者」として登録した工事施工者・建築事業者が、住宅省エネポータルから交付申請を行います。
- 交付された補助金は、事業者から施主に全額還元します(現金での支払いや工事代金への充当など)。
- みらいエコ住宅の新築のうち、長期優良住宅・ZEH水準住宅は子育て世帯・若者夫婦世帯に限られます(GX志向型住宅はすべての世帯が対象)。
- みらいエコ住宅・先進的窓リノベのリフォームは、1申請あたりの補助額の合計が5万円以上でないと申請できません。
- 予算の上限に達した時点で受付が終了します。各事業の予算の消化状況は公式サイトで公表されています。
- 国費が入っている自治体の補助制度とは、同じ工事で併用できないのが原則です。
② 事業者向け:建物の建設費も対象になる補助金
施主が中小企業の場合は、経済産業省・中小企業庁系の補助金が候補になります。ただし、多くの設備投資補助金は機械装置やシステムが中心で、建物の建設費は対象外です。建設会社が提案の軸にできるのは、次のように「建物費」が対象経費に含まれる制度です。
| 制度名 | 建物費の扱い | 補助上限・補助率 | 主な要件 |
|---|---|---|---|
| 中小企業成長加速化補助金 | 工場・倉庫・販売施設等の建設、増築、改修、中古建物の取得(建物附属設備・付帯工事を含む) | 上限5億円・補助率1/2 | 売上高10億円以上100億円未満で、売上高100億円を目指す中小企業。投資額1億円以上(税抜) |
| 中小企業新事業進出補助金 | 新事業に必要な建物費が対象経費に含まれる | 上限9,000万円(従業員数で変動)・補助率1/2 | 既存事業と異なる新市場・高付加価値事業への進出 |
事業者向け補助金の注意点
- 申請者は施主(事業者)自身です。事業計画書を作り、審査を受けて採択される必要があります。
- 原則として、交付決定の前に契約・発注・着工したものは補助の対象外です。「先に工事を始めて、あとから補助金」はできません。工程表は交付決定の時期から逆算して組みます。
- 補助金が入るのは事業完了後の実績報告・確定検査を経てからです。それまでの工事代金は施主が立て替える必要があるため、資金繰り(つなぎ融資)の確認が欠かせません。
- 公募回ごとに締切・要件・上限額が変わります。提案時点で公募中かどうか、次の公募予定があるかを必ず確認します。
③ 自治体の補助金:地域密着の工事で使いやすい
都道府県や市区町村も、住宅やまちづくりに関する独自の補助制度を設けています。代表的なものは次のとおりです。
- 木造住宅の耐震診断・耐震改修:旧耐震基準(昭和56年5月以前に着工)の住宅を対象とするものが多い
- 住宅リフォーム補助:市内の事業者による施工を条件とする例が多い
- 危険ブロック塀の撤去・改修
- 空き家の改修・除却
- 介護保険の住宅改修費:手すりの取付けや段差解消など。要介護・要支援認定を受けた方が対象で、支給限度基準額は原則20万円(自己負担1〜3割)
自治体の制度は、工事前の申請が必須のものがほとんどです。年度の途中で予算に達して締め切られることもあります。施工エリアの自治体の制度を一覧にしておくと、見積もりの段階ですぐ案内できます。
「工事+補助金」提案を始める前に押さえたい5つのこと
| チェック項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 1. 申請者は誰か | 住宅省エネのように事業者が申請する制度か、事業者向け補助金のように施主が申請する制度か |
| 2. 申請のタイミング | 契約・着工の前に申請や交付決定が必要か。対象となる契約日・着工日の期間はいつか |
| 3. 予算と締切 | 予算の消化状況、公募の締切、次回の公募予定 |
| 4. 併用の可否 | 国の補助金と自治体の補助金を同じ工事で併用できるか |
| 5. 書類作成を誰が担うか | 施主が申請者となる補助金の書類を、誰がどの立場で作るか(次の章を参照) |
見積書は、補助対象の工事と対象外の工事を分けて作っておくと、申請書類の作成や実績報告がスムーズです。施工前・施工中・施工後の写真も、補助金では証拠書類として求められることが多いため、撮影ルールを社内で決めておきましょう。
注意!補助金の申請書類の作成代行は行政書士の業務です
2026年1月1日に施行された改正行政書士法では、行政書士でない者が、他人の依頼を受け、「手数料」や「コンサルタント料」など、いかなる名目によるかを問わず対価を受け取って、官公署に提出する書類の作成を業として行うことはできない、という点が明確になりました。違反した場合は行為者に1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科され、その法人にも100万円以下の罰金が科されます。
施主が申請者となる補助金(事業者向け補助金や多くの自治体補助金)について、建設会社が申請書類の作成を引き受け、その対価を「申請サポート料」として請求したり、工事代金に上乗せしたりすると、この規定に抵触するおそれがあります。
- 建設会社が担ってよいこと:制度の紹介、見積書・図面・工事写真など施工者として用意する書類の提供、スケジュールの調整
- 行政書士に任せるべきこと:施主が申請者となる申請書や事業計画書などの作成・提出の代行
なお、住宅省エネキャンペーンのように、事業者自身が申請者として手続きを行う制度は、制度の仕組みとして事業者が申請するものです。
「工事は建設会社、申請書類は行政書士」と役割を分けて連携すれば、法令を守りながら、施主にワンストップの提案ができます。
まとめ
- 建設会社が提案に使える補助金は、住宅向け(住宅省エネ2026)・事業者向け・自治体の3系統
- 住宅省エネは登録した事業者が申請し、補助金は施主に還元する
- 事業者向け補助金は建物費が対象かどうかと、交付決定前に着工しないことが重要
- 施主が申請者となる補助金の書類作成代行は、行政書士と連携して行う
このカテゴリーでは、今後、個別の補助金の詳しい使い方や、提案の進め方を順次解説していきます。
補助金申請のご相談
全国建設業許認可サポートセンター(金榮国際行政書士事務所)では、建設会社さまと連携し、施主さまの補助金申請書類の作成をサポートいたします。「工事+補助金」の提案を始めたい建設会社さまは、下記の補助金の相談フォームからお気軽にお問い合わせください。料金はサービス料金のページでご確認いただけます。
出典:住宅省エネ2026キャンペーン公式サイト(国土交通省・経済産業省・環境省)、国土交通省「住宅省エネ2026キャンペーン」資料、中小企業成長加速化補助金・中小企業新事業進出補助金の公募情報、総務省「行政書士制度」。補助額や要件は公募回・年度ごとに変わるため、最新の情報は各制度の公式サイトでご確認ください。


