建設業の無許可営業の罰則|拘禁刑・法人1億円の罰金と名義貸し・元請の責任

建設業の無許可営業の罰則|拘禁刑・法人1億円の罰金と名義貸し・元請の責任 1. 建設業許可の基礎知識

建設業許可が必要な工事を許可なしで請け負うと、建設業法47条により3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(情状により両方)の対象になります。違反したのが法人の役員や従業員であれば、行為者本人に加えて、法人にも1億円以下の罰金刑が科される両罰規定(53条)があります。さらに、無許可業者と下請契約を結んだ元請の建設業者も、指示や営業停止の監督処分(28条)の対象です。

この記事では、無許可営業の罰則、名義貸しの危険性、元請が下請を選ぶときに確認すべきこと、違反を見つけたときの通報先を、e-Gov法令検索の建設業法と国土交通省などの公表資料をもとに解説します。

無許可営業とは?許可が必要な工事の範囲

建設業法3条により、元請・下請や公共・民間を問わず、建設工事の完成を請け負うことを営業とするには建設業許可が必要です。例外は「軽微な建設工事」だけを請け負う場合で、許可がいらないのは次の工事です。

  • 建築一式工事:1件の請負代金が1,500万円未満の工事、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事
  • 建築一式工事以外:1件の請負代金が500万円未満の工事

金額は消費税と地方消費税を含みます。許可を持たずにこの基準以上の工事を請け負うと、無許可営業になります。また、許可を持っていても、その業種の許可がない工事を500万円以上で請け負えば同じく問題になります。基準の詳しい考え方は500万円ルールの記事で解説しています。

無許可営業の罰則(建設業法47条・53条)

建設業法47条1項は、次のような行為をした者を3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金に処するとしています。

  1. 3条1項に違反して、許可を受けないで建設業を営んだとき(無許可営業)
  2. 16条に違反して下請契約を結んだとき(特定建設業の許可がないのに、一定額以上の下請契約を結ぶなど)
  3. 営業停止処分に違反して建設業を営んだとき
  4. 営業禁止処分に違反して建設業を営んだとき
  5. 虚偽または不正の事実に基づいて許可(更新を含む)や認可を受けたとき

47条2項では、情状によって拘禁刑と罰金を併科できるとされています。刑の名前は、2025年6月1日施行の改正刑法により、従来の「懲役」から「拘禁刑」に変わりました。都道府県のページには「懲役」と書かれた古い表記が残っていることもありますが、現行の建設業法は「拘禁刑」です。

法人には1億円以下の罰金(両罰規定)

建設業法53条は、法人の代表者や従業員などが、その法人の業務に関して47条の違反をしたときは、行為者を罰するほか、法人にも1億円以下の罰金刑を科すと定めています。個人事業主の場合は、業務に関して従業員などが違反すれば、事業主にも罰金刑が科されます。

罰金刑を受けると、5年間は許可が取れない

国土交通省「許可の要件」によると、建設業法などに違反して罰金刑を受け、その執行が終わってから5年を経過しない者は欠格要件に当たります。法人の場合は役員等も対象です。つまり、無許可営業で処罰されると、その後しばらく許可を取ること自体ができなくなります。

虚偽申請・名義貸しの危険性

虚偽の申請も処罰の対象

許可申請書や添付書類にうその記載をして提出すると、建設業法50条で6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります。うその事実で許可を受けた場合は、47条1項5号に当たります。さらに、不正の手段で許可を受けた場合は、29条1項7号により許可が取り消されます。

「名義貸し」はどう扱われるか

「名義貸し」という言葉を直接使った条文は、建設業法の罰則規定には見当たりません。ただし、よく見られる名義貸しには、次のように既存の規定が当てはまります。

  • 許可業者の名義で、無許可業者が実際に工事を請け負う:実態として許可を受けないで建設業を営んでいることになり、無許可営業(47条1項1号)の問題になります。
  • 勤務実態のない人を営業所技術者等(旧:専任技術者)や常勤役員等として届け出る:申請書や届出書のうその記載(50条)や、うその事実に基づく許可(47条1項5号)の問題になります。営業所技術者等は営業所に常勤・専任であることが求められ、いなくなれば許可取消しの対象です。
  • 請け負った工事を実質的に丸ごと他社にやらせる:一括下請負の禁止(22条)に当たる可能性があります。国土交通省の監督処分基準では、22条違反は原則として15日以上の営業停止です。

実際に関東地方整備局は令和5年2月、要件を満たさない者を営業所の専任技術者や監理技術者として置き、経営事項審査でも虚偽の申請をしていた業者に、営業停止を含む処分を行っています。「名前を借りるだけ」「名前を貸すだけ」のつもりでも、貸した側・借りた側の両方に重い不利益が生じます。

無許可業者に発注した元請も処分される

無許可業者を下請に使った元請の建設業者も、責任を問われます。

建設業法28条による指示・営業停止

建設業法28条1項6号は、建設業者が許可を受けないで建設業を営む者と下請契約を結んだときを、許可行政庁が必要な指示をできる場合として定めています。同条3項により、1年以内の期間を定めて営業の全部または一部の停止を命じることもできます。国土交通省の監督処分基準(令和8年10月1日以降の不正行為に適用)では、無許可業者との下請契約は7日以上の営業停止が原則とされています(酌量すべき情状があれば減軽)。

また、28条1項7号は、特定建設業者以外の業者と、政令で定める金額(5,000万円、建築工事業は8,000万円)以上の下請契約を結んだ場合も処分の対象としています。さらに、28条1項各号に該当して情状が特に重い場合や、営業停止処分に違反した場合は、29条1項8号により許可が取り消されます。

元請が陥りやすいミス

関東地方整備局は、無許可業者との下請契約の違反事例として、次のような原因を挙げています。

  • 取引開始時には許可を確認したが、契約時点で有効期間が切れていた
  • 土木や建築の許可は確認したが、実際に施工する専門工事の業種の許可を確認していなかった
  • 電気工事業の登録など、建設業許可とは別の登録を許可と勘違いした
  • 施工部分だけなら500万円未満と考え、注文者が支給する材料の価格を含めていなかった
  • 当初は500万円未満だったが、増額の変更契約で500万円以上になった

元請が下請の許可を確認する方法

関東地方整備局の資料などを参考にすると、元請は下請契約を結ぶたびに次の点を確認するのが基本です。

  1. 必要な業種の許可があるか:施工する工事の業種と許可業種が合っているか。
  2. 有効期間内か:許可通知書の写しや、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で確認します。システムへの反映には時間差があるため注意が必要です。なお、更新申請中であれば、処分が出るまで従前の許可が有効です(建設業法3条4項)。
  3. 請負代金の合計額:工事を分割した契約の合計、注文者が提供する材料の市場価格や運送賃、増額の変更契約も含めて判断します。
  4. 再下請の状況:施工体制台帳を作る工事では、再下請負通知書の許可欄も確認できます。

特定建設業者には、下請業者の法令違反を防ぐための指導に努めることも求められています(建設業法24条の7)。違反を知った場合は是正を求め、是正されなければ許可行政庁などに通報することとされています。

無許可営業・違反の通報窓口

国土交通省は、建設業法違反の通報窓口として「駆け込みホットライン」を設けています。

  • 電話:0570-018-240(ナビダイヤル。通話料は発信者負担)
  • 受付時間:10時〜12時、13時30分〜17時(土日・祝日・閉庁日を除く)
  • 電話は、最寄りの地方整備局等の建設業法令遵守推進本部につながります
  • インターネットの情報収集フォームからは、時間や場所を問わず情報提供ができます

国土交通省によると、建設業法違反に対しては各許可行政庁が指導・監督処分を行い、許可を持っていない者については施工現場を管轄する都道府県が対応します。知事許可業者については、都道府県の建設業担当課も相談先になります(例:宮城県は県のページで窓口を案内しています)。

よくある質問

無許可営業はバレますか?

取引先の元請による許可確認、通報窓口への情報提供、許可申請時の工事経歴の確認など、発覚のきっかけはいくつもあります。「バレるかどうか」ではなく、許可が必要な工事は許可を取ってから受注するのが原則です。

下請として500万円以上の工事を受けたら、元請も処分されますか?

元請が建設業者であれば、無許可業者と下請契約を結んだことで、建設業法28条による指示や営業停止の対象になります。監督処分基準では原則7日以上の営業停止です。

法人の罰金1億円は、無許可営業なら必ず科されますか?

1億円は上限です。53条は、従業員などが法人の業務に関して47条に違反したとき、法人にも1億円以下の罰金刑を科すことができると定めています。実際の刑は事案ごとに判断されます。

許可の更新を忘れて期限が切れた後の工事はどうなりますか?

許可が失効すると無許可の状態になるので、軽微な建設工事を超える工事は請け負えません。改めて新規申請が必要です。更新は満了日の30日前までに申請しましょう。

まとめ

無許可営業は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、法人には1億円以下の罰金という重い刑事罰の対象です。処罰されると5年間は許可を取れなくなります。名義貸しも、無許可営業や虚偽申請として扱われる危険があります。元請は契約のたびに下請の許可業種・有効期間・請負代金の合計を確認し、違反を見つけたら駆け込みホットラインや許可行政庁に相談しましょう。

ご相談について

「500万円を超える工事の話が来たが許可がない」「下請の許可の確認方法を社内で整えたい」といったご相談にも対応しています。まずは相談・見積りページからお気軽にお問い合わせください。許可の取得要件は要件まとめの記事で確認できます。

参考(公的情報)

※本記事は2026年10月時点の公表情報をもとに作成しています。最新の取扱いは許可行政庁の手引き等でご確認ください。

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