個人事業主として建設業許可を持っている方が「法人成り」をする場合や、親から子へ事業を引き継ぐ場合、会社同士で合併する場合、以前は許可をいったん失い、新しい事業者が許可を取り直す必要がありました。令和2年10月施行の建設業法改正で、事業譲渡・合併・分割は「事前の認可」、相続は「死亡後30日以内の認可申請」によって、建設業者としての地位をそのまま引き継げる制度ができています。
結論を先にまとめると、次のとおりです。
- 個人事業主から法人への法人成りは「事業譲渡」の一類型として認可の対象になります(関東地方整備局の手引き)。
- 認可は承継の日より前に受ける必要があり、承継後にさかのぼって認可を受けることはできません。
- 相続は、被相続人(亡くなった事業主)の死亡後30日以内に相続人が認可を申請します。
- 許可業者でない者が承継する場合、許可番号は従前のものを引き継ぎ、有効期間は承継日の翌日から新たに5年となります。
以下、建設業法17条の2・17条の3と、国土交通省・地方整備局・都道府県の資料で確認できた内容をもとに解説します。
建設業許可の事業承継制度とは(令和2年10月改正)
国土交通省の資料「建設業の事業承継の概要」によると、改正前は事業譲渡・合併・分割を行うと承継後の事業者が許可を取り直す必要があり、その間に営業できない「空白期間」が生じていました。改正後は、あらかじめ許可行政庁の認可を受けておけば、事業譲渡等の日に許可も承継され、空白期間なく営業を続けられます。
根拠となる条文は次の2つです。
| 条文 | 対象 | タイミング |
|---|---|---|
| 建設業法17条の2 | 事業譲渡(譲渡・譲受け)、合併、分割 | 事前に認可を受ける |
| 建設業法17条の3 | 相続(個人事業主の死亡) | 死亡後30日以内に認可を申請 |
なお、承継は「建設業の全部」が対象です。持っている業種の一部だけを引き継ぐことはできず、承継しない業種は承継日前に廃業届を出しておく必要があると、関東地方整備局の手引きで案内されています。
個人事業主から法人へ(法人成り)は「事業譲渡」の認可で
関東地方整備局の「事業承継等に係る認可申請の手引き」では、事業譲渡の類型に個人事業主から法人への法人成り(その逆の、法人を廃業して個人事業主として開業する場合も)が含まれると明記されています。この場合、譲渡人が個人事業主、譲受人が新しい法人となり、両者が共同で譲渡の認可申請を行います。
承継する法人が許可要件を満たしていること
認可の審査では、許可の要件(建設業法7条)や欠格要件(8条)が準用されます。つまり、承継日の時点で新しい法人が許可要件を満たしている必要があります。具体的には、法人の常勤役員等として経営業務の管理を適正に行う体制があるか、営業所技術者(旧:専任技術者)が法人の営業所に常勤しているか、社会保険の届出がされているか、などです。経営業務の管理体制の考え方は経営管理要件(経管)の解説記事もご参照ください。
一般・特定の区分の注意
同じ業種で、譲渡人が一般建設業・譲受人が特定建設業(またはその逆)の許可を持っている場合は、その業種について地位を承継できません。法人成りで新設会社が許可を持っていない通常のケースでは問題になりにくいですが、すでに法人側でも許可を持っている場合は事前に確認が必要です。
認可申請のタイミングと手続きの流れ
事業譲渡・合併・分割の認可は、効力発生日(承継予定日)より前に受けなければなりません。申請の受付期限は許可行政庁ごとに異なります。
| 許可行政庁(例) | 受付の目安 |
|---|---|
| 大阪府(知事許可) | 効力発生日の30日前まで(45日前までの申請を推奨)。事前相談は遅くとも2か月前が目途 |
| 関東地方整備局(大臣許可) | 承継予定日の90日前まで(標準処理期間90日)。事前相談は随時 |
大まかな流れは次のとおりです。
- 許可行政庁へ事前相談(承継の形態、要件の確認)
- 認可申請書と添付書類の提出(大阪府・関東地方整備局とも手数料はかかりません)
- 許可行政庁の審査、認可・不認可の通知
- 承継予定日に事業譲渡・設立後の譲受け等を実行し、その日に地位を承継
法人成りの場合、会社の設立登記、社会保険の新規適用、営業所の賃貸借契約の名義など、承継日までに法人側で整えるべき事項が多くあります。設立スケジュールと認可申請の受付期限を逆算して計画することが大切です。予定日に承継が行われなかった場合は認可の取消しの対象になり得るため(関東地方整備局の手引き)、日程の変更が生じたら早めに許可行政庁へ相談してください。
相続の場合は死亡後30日以内に認可申請
個人事業主が亡くなり、相続人がその建設業を引き続き営もうとする場合は、被相続人の死亡後30日以内に相続人が認可を申請します(建設業法17条の3第1項)。
相続の認可申請をした場合、死亡の日から認可(または不認可の通知)を受けるまでの間は、被相続人の許可が相続人に対するものとみなされます(同条2項)。そのため、申請さえ期限内にしておけば、審査中も営業が途切れません。
一方、相続人が認可を申請せず事業を引き継がない場合は、相続人が30日以内に廃業届を提出します(建設業法12条1号)。30日という期間は葬儀や相続手続きと重なり非常に短いため、相続人となる家族が営業所技術者等の要件を満たせるかどうか、生前から確認しておくと安心です。
認可後の許可番号・有効期間はどうなる?
許可番号
大阪府・関東地方整備局の手引きでは、許可業者でない者が承継する場合は被承継者の許可番号を引き継ぐとされています。許可業者同士の承継(合併など)では、どちらの許可番号を使うか選択できます。
有効期間
認可を受けて承継した許可の有効期間は、残りの期間にかかわらず承継の日の翌日から起算されます(建設業法17条の2第7項、相続は17条の3で準用)。関東地方整備局の資料では、承継日当日も許可が有効であるため、事業承継の場合の有効期間は「5年と1日」になると説明されています。承継先がもともと持っていた許可も含めて有効期間がそろう点は、更新の管理がしやすくなるメリットです。
許可年月日の具体的な表記については、今回確認した公的資料では詳しい説明が見当たりませんでした。認可通知書の記載内容を確認し、許可票(看板)や名刺、ホームページの表示を必要に応じて直してください。
認可制度を使わない場合の選択肢
事業承継の認可は「使わなければならない」制度ではありません。たとえば承継日までに法人側の要件がそろわない場合などは、従来どおり、法人として新規に許可を取得し、個人の許可は廃業届を出すという方法もあります。ただしこの方法では、法人の許可が下りるまでの間、軽微な建設工事を超える工事を請け負えない空白期間が生じます。また、個人の許可を廃止する際には30日以内の廃業届が必要です(建設業法12条5号。なお、17条の2の認可を受けた譲渡は同号の対象から除かれています)。兵庫県のQ&Aでも、法人成りをした場合に廃業届の提出が必要とされていますので、どちらの方法をとる場合も、許可行政庁の案内に従って届出漏れがないようにしましょう。
個人事業主の段階での許可要件については個人事業主・一人親方の建設業許可の記事で解説しています。
よくある質問
Q. 法人成りをした後で、さかのぼって認可を受けられますか?
受けられません。大阪府の手引きでは、事業承継等は効力発生日前の認可が必要で、承継の事実が発生した後にさかのぼって認可することはできないとされています。会社設立の日程が決まった段階で、早めに相談してください。
Q. 認可申請に手数料はかかりますか?
大阪府・関東地方整備局の手引きでは、認可申請の手数料はかからないとされています。ただし、住民票・登記事項証明書などの添付書類の取得費用は別途必要です。
Q. 父が亡くなりました。30日を過ぎるとどうなりますか?
建設業法17条の3は死亡後30日以内の申請を求めており、期限を過ぎると相続による承継の認可は受けられないと考えられます。その場合、相続人が新たに許可を取得する必要があります。期限が迫っている場合は、すぐに許可行政庁へ連絡してください。
Q. 一部の業種だけを法人に引き継げますか?
できません。承継は建設業の全部が対象です。引き継がない業種は承継日前に廃業届(一部廃業)を出す取扱いとされています。
まとめ
- 法人成り・事業譲渡・合併・分割は、承継日前に認可を受ければ許可を引き継げる(建設業法17条の2)。
- 相続は死亡後30日以内に認可申請。申請中は被相続人の許可が相続人のものとみなされる(17条の3)。
- 承継先は承継日時点で許可要件を満たしている必要がある。
- 許可業者でない者が承継する場合は許可番号を引き継ぎ、有効期間は承継日の翌日から起算。
- 受付期限・必要書類は許可行政庁により異なるため、2〜3か月前には事前相談を。
承継後は、役員・営業所・技術者などの変更届も必要になることがあります。届出の期限は変更届の種類と期限一覧で整理しています。
法人成り・事業承継のご相談
法人成りや親族への承継は、会社設立・社会保険・許可要件の確認を同時に進める必要があり、スケジュールの組み方が重要です。金榮国際行政書士事務所では、全国の許可行政庁の手引きを確認したうえで、認可申請の可否や段取りを一緒に整理しています。「うちの場合は認可が使えるのか」といった段階からでもお気軽に相談・見積もりページからお問い合わせください。
参考(公的情報)
- 国土交通省「建設業の事業承継の概要」
- e-Gov法令検索「建設業法」(17条の2、17条の3、12条)
- 関東地方整備局「事業承継等に係る認可申請の手引き」
- 大阪府「建設業許可 事業承継等認可申請の手引き」
- 兵庫県「建設業許可に係るQ&A」
- 国土交通省「建設業の許可」
※本記事は2026年10月時点の公表情報をもとに作成しています。最新の取扱いは許可行政庁の手引き等でご確認ください。


