個人事業主・一人親方の建設業許可|取得条件と必要書類、確定申告書・社会保険の注意点

個人事業主・一人親方の建設業許可|取得条件と必要書類、確定申告書・社会保険の注意点 2. 許可の要件

個人事業主や一人親方でも、建設業許可は取れます。条件は法人と同じく建設業法の4つの許可要件(経営業務の管理能力、営業所技術者、誠実性、財産的基礎)を満たし、欠格要件に当てはまらないことです。個人ならではのポイントは、経営業務の管理責任者(経管)は事業主本人か支配人がなること、経営経験を確定申告書で証明すること、そして社会保険の加入義務が従業員数などで変わることの3つです。

この記事では、個人事業主が建設業許可を取るための条件と、準備すべき必要書類、社会保険の考え方を、官公庁の手引きをもとに整理します。

個人事業主・一人親方でも建設業許可は取れる

建設業許可は法人だけの制度ではありません。国土交通省のページでも、許可要件は法人・個人の両方を前提に説明されています。一人親方の場合、事業主本人が経管と営業所技術者(旧称:専任技術者)の両方の要件を満たせば、従業員がいなくても申請できます。

許可が必要になるのは、軽微な建設工事を超える工事を請け負う場合です。建築一式工事以外では1件の請負代金が500万円(税込)以上の工事、建築一式工事では1件の請負代金が1,500万円(税込)以上の工事(延べ面積150㎡未満の木造住宅工事を除く)が該当します。元請から許可の取得を求められるケースも増えています。

条件1:経管は事業主本人または支配人

経営業務の管理を適正に行う能力について、関東地方整備局の手引きでは、個人の場合の常勤役員等を「その者又はその支配人」としています。つまり、次のどちらかが要件を満たす必要があります。

  • 事業主本人:建設業の経営経験がある本人がなるのが一般的
  • 支配人:大阪府の手引きでは、支配人に当たるかどうかは商業登記の有無で判断するとされています

代表的な要件は、建設業に関し5年以上、経営業務の管理責任者としての経験を有することです。個人事業主として5年以上、建設業を営んできた方であれば、その期間を経営経験として使えるのが基本です。経験の種類や年数のパターンは複数あるため、詳しくは経営管理要件(経管)の解説記事をご覧ください。

経営経験は確定申告書で証明する

個人事業主としての経営経験は、自己申告だけでは認められず、書類での裏付けが必要です。

  • 関東地方整備局(大臣許可):経験期間分の確定申告書(第一表・第二表)の写し、許可を受けていた期間は許可通知書の写し。自己証明は原則認められない
  • 大阪府(知事許可):営業の実態を確定申告書の第一表で確認(税務署の受付印または電子申告の受信通知。令和7年以降の申告分は受付印不要)。あわせて、工事内容・工事期間・請負金額がわかる資料で各年の営業実績を確認

大阪府の手引きでは、営業実績の資料について、ある工事から翌年の工事までの間隔が1年以上空かないようにすることも示されています。確定申告書を紛失している場合は、税務署での開示手続きなどが必要になることもあるため、早めに手元の書類を確認しましょう。確認資料の種類は都道府県により異なります。

条件2:営業所技術者の要件(資格または実務経験)

許可を受けたい業種ごとに、営業所技術者を置く必要があります。一人親方なら、通常は本人がなります。要件は次のいずれかです。

  • 施工管理技士・建築士・電気工事士などの国家資格等を持っている
  • 指定学科を卒業し、一定年数(大学3年・高校5年など)の実務経験がある
  • 許可を受けたい業種で10年以上の実務経験がある

東京都の手引き(令和8年度版)では、同一営業所内で両方の基準を満たす人は、経管と営業所技術者を1人で兼ねられるとされています。資格ごとの対応業種は営業所技術者の要件と資格一覧で確認できます。資格がない方は、実務経験を工事の請求書や契約書などで証明することになります。

条件3:財産的基礎(個人の自己資本の考え方)

一般建設業では、自己資本500万円以上、または500万円以上の資金調達能力があることなどが求められます。個人の自己資本は、関東地方整備局・東京都の手引きによると次の算式で計算します。

期首資本金+事業主借勘定+事業主利益-事業主貸勘定+利益留保性の引当金・準備金

決算書でこの金額が500万円に満たない場合でも、本人名義の口座の500万円以上の預金残高証明書や、金融機関の融資証明書で要件を満たせることがあります。証明書の有効期間は都道府県により異なります(例:愛知県は申請直前4週間以内、山形県は申請日から1か月以内)。詳しくは財産的基礎(500万円・残高証明)の解説をご覧ください。

条件4:社会保険の加入(個人事業主の場合)

建設業許可では、健康保険・厚生年金保険・雇用保険について、適用事業所に該当する場合に届出をしていることが要件です。個人事業主は、従業員の人数や雇い方によって加入義務が変わります。

保険 個人事業所での扱い
健康保険・厚生年金保険 常時5人以上の従業員を使用する事業所は強制適用。建設業(土木・建築等の事業)は適用業種に含まれる。5人未満なら適用事業所ではない(任意適用は可能)
雇用保険 労働者を1人でも雇えば原則として適用(週20時間以上・31日以上の雇用見込みの労働者が被保険者)

健康保険法第3条第3項第1号では、常時5人以上の従業員を使用する事業所のうち、土木・建築その他工作物の建設等の事業などが適用事業所として定められています。日本年金機構も、従業員が常時5人以上いる個人の事業所は、農林漁業・サービス業などの場合を除いて厚生年金保険の適用事業所になると案内しています。

大阪府の手引きでは、次の点も示されています。

  • 家族従業員を除く従業員が5人以上の個人事業主は、原則として適用事業所になる
  • 健康保険は、適用事業所であっても年金事務所の適用除外承認を受けられる場合がある
  • 個人事業主と同居の親族のみで構成される事業所は、雇用保険は原則適用除外。判断はハローワークに確認

従業員がいない一人親方の事業所は、健康保険・厚生年金保険の適用事業所にも雇用保険の適用事業にも該当しません。大阪府の手引きでも、国民健康保険に加入している場合の確認資料が案内されています。一方、従業員を雇っているのに雇用保険の手続きをしていない場合は、申請前に手続きを済ませておきましょう。

個人事業主の必要書類のポイント

申請書類の多くは法人と共通ですが、個人特有のものや法人と異なるものがあります。関東地方整備局の手引きをもとに主なものを挙げます(都道府県により異なります)。

  • 身分証明書(本籍地の市区町村が発行)、登記されていないことの証明書(法務局が発行):本人、支配人、令3条使用人がいる場合はその人の分
  • 納税証明書:大臣許可の個人では所得税の納税証明書。知事許可では求める税目・様式が都道府県ごとに異なる
  • 経営経験の確認資料:経験期間分の確定申告書の写し
  • 営業所技術者の資格証の写し、または実務経験の確認資料
  • 財産的基礎の確認資料(決算書、または預金残高証明書・融資証明書)
  • 社会保険の加入状況がわかる資料(加入している健康保険の確認資料、雇用保険の適用がある場合は労働保険の申告書・領収済通知書の写しなど)

関東地方整備局の手引きでは、身分証明書と登記されていないことの証明書は申請日前3か月以内のもの、その他の発行日のある法定書類は発行から3か月以内のものを提出するとされています。法人の登記事項証明書や定款は個人では不要です。

個人で許可を取った後に法人成りする場合の注意

個人事業主として取った建設業許可は、事業主個人に対する許可です。後で会社を設立して法人成りすると、原則として法人で新たに許可を取り直す必要があります。ただし、建設業法には事業譲渡などに伴う地位の承継について、事前に認可を受けて許可を引き継ぐ制度があります(国土交通省「事業承継の概要」)。法人成りを予定している方は、個人で申請するか、先に法人化してから申請するか、スケジュールを含めて検討するとよいでしょう。

よくある質問

従業員ゼロの一人親方でも社会保険の要件を満たせますか?

従業員がいない個人事業所は、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の適用事業所に該当しないため、これらに加入していなくても要件を欠くことにはなりません。申請時には、加入している健康保険(国民健康保険など)の確認資料の提出を求められるのが一般的です。

確定申告をしていない年がありますが、経営経験になりますか?

確定申告書は営業の実態を確認する重要な資料です。申告していない期間は、経営経験として証明することが難しくなります。どの資料で代替できるかは許可行政庁により異なるため、事前に相談が必要です。

白色申告でも許可は取れますか?

白色申告でも許可は取れます。ただし貸借対照表がないと自己資本の判断がしにくいため、預金残高証明書などで財産的基礎を示す方法を検討することになります。

家族を雇っている場合、社会保険はどうなりますか?

同居の親族のみの事業所は、雇用保険は原則適用除外とされています(大阪府の手引き)。家族以外の従業員がいる場合は扱いが変わるため、ハローワーク・年金事務所に確認してください。

まとめ

  • 個人事業主・一人親方でも建設業許可は取れる
  • 経管は本人または支配人。経営経験は確定申告書と工事の資料で証明する
  • 健康保険・厚生年金は常時5人以上の従業員で強制適用。雇用保険は労働者を1人でも雇えば原則適用
  • 必要書類は法人と一部異なり、納税証明書の種類などは都道府県により異なる

個人での許可取得を考えている方へ

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参考(公的情報)

※本記事は2026年10月時点の公表情報をもとに作成しています。最新の取扱いは許可行政庁の手引き等でご確認ください。

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