建設業許可の「経管(けいかん)」というと、「建設業の会社の社長を5年以上やった人」を思い浮かべる方が多いと思います。もちろんそれが一番多いケースですが、建設業法施行規則第7条第1号を見ると、経管の要件を満たすルートは全部で5つあります。執行役員としての経験、役員を支えてきた補佐経験、さらに「役員経験2年+直接補佐者」という組み合わせでも認められる場合があります。
この記事では、まず動画で経管の基本を確認したうえで、5つのパターンをそれぞれ「誰が使えるのか」「何で証明するのか」「どこでつまずきやすいのか」に分けて整理します。
まずは動画で経管の基本を確認(約3分)
経管の基本要件・審査の注意点(常勤性と経験の裏付け)・必要書類の3つを、キャンピングカー行政書士が約3分で解説しています。
▲ 動画の内容を文章で読みたい方は、経営管理要件(経管)とは?5年の経験・常勤性・必要書類をご覧ください。この記事では、動画で触れた「5年以外のパターン」を詳しく掘り下げます。
経管の5つのパターン早見表
経管は法律上「常勤役員等」と呼ばれ、法人なら常勤の役員、個人なら事業主本人か支配人のうち1人が、次のいずれかに当てはまる必要があります。
| パターン | どんな経験か | 必要な年数 | 直接補佐者 |
|---|---|---|---|
| ① 規則7条1号イ(1) | 建設業の役員・個人事業主など(経営業務の管理責任者)としての経験 | 5年以上 | 不要 |
| ② 規則7条1号イ(2) | 執行役員等として建設業の経営業務を管理した経験 | 5年以上 | 不要 |
| ③ 規則7条1号イ(3) | 役員等に次ぐ地位で、経営業務の管理責任者を補佐した経験 | 6年以上 | 不要 |
| ④ 規則7条1号ロ(1) | 建設業の役員等2年以上を含め、建設業の役員等または役員等に次ぐ地位(財務・労務・業務運営の担当)で通算5年以上 | 2年+通算5年 | 必要 |
| ⑤ 規則7条1号ロ(2) | 建設業の役員等2年以上を含む、役員等としての経験(建設業以外も可) | 2年+通算5年 | 必要 |
このほか、国土交通大臣が同等以上と認定する方法(規則7条1号ハ)もありますが、利用されることはまれです。なお、どのパターンでも「建設業に関し」とは29業種すべてを指し、取りたい業種と同じ業種での経験である必要はありません。
パターン①:建設業の役員・個人事業主として5年(イ(1))
もっとも多いのがこのパターンです。建設業を営む会社の取締役(持分会社なら業務を執行する社員)、個人事業主、支配人として、建設業の経営業務を総合的に管理した経験が5年以上ある人が当てはまります。支店長・営業所長のように、営業取引上、対外的に責任を持つ地位での経験も含まれます。一方、単なる連絡所の長や、工事の施工だけを行う事務所の長の経験は含まれません。
- 会社の役員経験:登記事項証明書(閉鎖事項証明書を含む)で在任期間を示す
- 個人事業主の経験:確定申告書の控えで事業の期間を示す
- 許可を持っていなかった期間:工事の契約書・注文書・請求書などで、その期間に建設業を営んでいたことを示す
個人事業主の方の進め方は個人事業主・一人親方の建設業許可でも解説しています。
パターン②:執行役員として5年(イ(2))
取締役ではなく「執行役員」として経験を積んできた人のためのルートです。ただし、肩書が執行役員なら誰でもよいわけではありません。国土交通省関東地方整備局の資料では、次の点が確認されるとされています。
- 取締役会の決議で、特定の事業部門について業務執行の権限を委ねられた者として選任されていること
- その事業部門が建設業に関する部門であること
- 取締役会が定めた方針に従い、代表取締役の指揮命令のもとで業務執行に専念していたこと
建設業の一部の営業部門だけ、資金や資材の調達だけを担当する部門の執行役員は認められません。証明には、組織図、業務分掌規程、執行役員規程、取締役会の議事録、人事発令書などが使われます。社内規程が整っている中堅以上の会社向けのルートといえます。
パターン③:役員を補佐した経験6年(イ(3))
役員や事業主のすぐ下の立場で、経営者を支えてきた人のためのルートです。必要な年数は6年以上と、①②より1年長くなります。
ここでいう補佐の経験とは、建設工事に必要な資金の調達、技術者・技能者の配置、下請業者との契約の締結といった経営業務の全般に、役員等に次ぐ職制上の地位で関わった経験のことです。個人事業の場合は、事業主や支配人に次ぐ立場での経験が対象になります。経理だけ、現場管理だけといった一部分の担当では足りません。
「親の代から家業を手伝ってきた後継者」が思い浮かびやすいケースですが、立場と仕事の中身を組織図や業務分掌、決裁文書などで示す必要があるため、証明のハードルは①より高めです。事業承継の手続きそのものは法人成り・事業承継・相続で建設業許可を引き継ぐ方法で解説しています。
パターン④⑤:役員2年+直接補佐者(ロ)
2020年10月1日の建設業法改正で加わったルートです。経管となる常勤役員等の経験が5年に足りなくても、その人を支える直接補佐者を置くことで、会社全体の体制として要件を満たします。
常勤役員等の要件
- ④ ロ(1):建設業の役員等の経験が2年以上あり、かつ、建設業の役員等または役員等に次ぐ地位(財務管理・労務管理・業務運営のいずれかの担当)としての経験が通算5年以上。たとえば建設業の会社で、役員の直下の部長として財務を3年担当した後、取締役を2年務めた人などが候補になります
- ⑤ ロ(2):役員等としての経験が通算5年以上あり、そのうち建設業の役員等の経験が2年以上
⑤は、通算5年のうち建設業以外の会社での役員経験も数えられる点がポイントです。たとえば「製造業の会社で取締役を3年、その後建設業の会社で取締役を2年」という経歴なら、⑤の候補になります。
直接補佐者の要件
常勤役員等の下に、次の3つの業務経験を持つ人を「直接に補佐する者」として置きます。
| 業務経験 | 中身 |
|---|---|
| 財務管理 | 工事に必要な資金の調達、施工中の資金繰り、下請業者への支払いなど |
| 労務管理 | 社内や現場の勤怠管理、社会保険の手続きなど |
| 業務運営 | 会社の経営方針・運営方針の策定と実施 |
- それぞれ5年以上の経験が必要です。
- その経験は、許可を申請する会社(または個人事業)自身での、建設業の業務経験に限られます。よその会社での経験は数えられません。
- 関東地方整備局の資料では、3つの経験期間は重なってもよく、1人ですべてを兼ねることもできるとされています。
- 「直接に補佐する」とは、常勤役員等との間に別の人を挟まず、組織上も実態上も直接指示を受けて、常勤で業務を行うことです。
注意したいのは、申請する会社自身での5年の経験が必要という点です。設立して間もない会社では直接補佐者の要件を満たせないため、このルートは「建設業を続けてきた会社で、経管の世代交代をしたい」ときに検討されることが多くなります。
また、直接補佐者の経験として事務担当者としての経験を含められるかは、関東地方整備局の資料では「含めることができる」とされる一方、長野県のように「事務員等としての経験は該当しない」と案内している県もあります。許可行政庁によって扱いが分かれるため、申請先の手引きを必ず確認してください。
申請書類は、①〜③が様式第七号、④⑤は様式第七号の二と、組織図などの別紙を使うのが一般的です。
どのパターンでも共通の注意点
- 今、常勤していること:原則として本社などの主たる営業所で、毎日所定の時間、職務に従事していることが必要です。ほかの会社の常勤役員や、専任の宅地建物取引士・管理建築士などと重なっている場合は、原則として常勤とは認められません(専任を要する営業体と場所が同じ場合を除く)。
- 非常勤役員だった期間:経営への関わり方や権限によって個別に確認されます。「登記上は取締役だった」だけでは足りないことがあります。
- 期間が途切れていないか:在任期間・事業期間を年ごとに書き出し、証明書類で埋まらない空白がないか確認しましょう。
②〜⑤のパターンは事前相談を
①以外のパターンは、組織図や社内規程を使って「立場」と「仕事の中身」を個別に確かめるため、審査に時間がかかりやすくなります。国土交通大臣許可(関東地方整備局)では「個別認定」という手続きがあり、経管を変更する予定日のおおむね2か月前までに申請するよう案内されています。都道府県知事許可でも、事前相談を求める県があります。
経管が退職するなどして交代する場合は、変更の届出が必要です。後任が要件を満たしていないと許可を維持できないため、交代の予定がわかった時点で準備を始めましょう。届出の期限は建設業許可の変更届の期限一覧で確認できます。
よくあるご質問
建設業以外の会社の役員経験は、経管に使えますか?
①〜④では使えませんが、⑤(ロ(2))なら、通算5年の役員経験のうち建設業以外の会社での期間も数えられます。ただし建設業の役員等としての経験が2年以上必要で、さらに直接補佐者を置く必要があります。
電気工事業の役員経験で、内装仕上工事業の許可を取れますか?
経管の要件としては取れます。経管の経験は業種ごとに区別されず、29業種のどれでの経験でもかまいません。ただし、営業所技術者(旧:専任技術者)は取りたい業種ごとの資格・経験が必要なので、営業所技術者の要件と資格一覧もあわせて確認してください。
直接補佐者は3人必要ですか?
関東地方整備局の資料では、財務管理・労務管理・業務運営のすべての経験があれば1人でもよいとされています。申請先によって確認の仕方が異なることがあるため、手引きや事前相談で確かめておくと安心です。
どのパターンに当てはまるか、自分で判断できません。
経歴を年ごとに書き出してみるのが第一歩です。役員の在任期間、個人事業の期間、執行役員や部長などの役職、担当していた業務を並べると、使えそうなパターンが見えてきます。そのうえで、必要書類がそろうかを確認しましょう。
経管のパターン選びで迷ったら
経管は、建設業許可の要件の中でも、経歴の当てはめと証明書類の組み立てで結果が変わりやすい部分です。建設業許認可・農地転用サポートセンターでは、登記事項証明書や確定申告書、組織図などをもとに、どのパターンで申請できるかを一緒に整理します。まずはご相談・お見積りページから状況をお聞かせください。
許可の要件全体は建設業許可の要件・取得条件まとめ、実務経験での要件の満たし方は実務経験で取るには?でも解説しています。
参考(公的情報)
※この記事は2026年10月時点の公的情報をもとにしています。必要書類や細かな取り扱いは許可行政庁ごとに異なるため、申請前に必ず最新の手引きをご確認ください。


