資格がなくても、10年などの実務経験があれば建設業許可の営業所技術者(旧:専任技術者)になれます。ただし、その経験は口頭では認められず、「実務経験証明書(様式第九号)」という書類にまとめ、契約書などの資料で裏付ける必要があります。
実際の申請では、「工事名をどこまで具体的に書くのか」「何か月と数えるのか」「前の会社に証明してもらえないときはどうするのか」でつまずく方が多くいます。この記事では、実務経験証明書の各欄の書き方を、記入例とよくある書き間違いとあわせて解説します。
まずは動画で実務経験の基本を確認
実務経験は何年必要か、経験をどう証明するかのポイントを、キャンピングカー行政書士が動画で解説しています。
▲ 必要年数の4つのルートや、2023年7月の要件緩和は実務経験で取るには?必要年数と証明のコツで詳しく解説しています。この記事では、証明書の「書き方」に絞ってお話しします。
実務経験証明書(様式第九号)とは
実務経験証明書は、営業所技術者になる人が、許可を受けたい業種の工事にどれだけの期間関わってきたかを、雇っていた側(使用者)が証明する書類です。建設業法施行規則で定められた様式で、「様式第九号」と呼ばれます。
作り方の基本ルールは次のとおりです。
- 業種ごとに作る(内装仕上工事と塗装工事なら2種類)
- 技術者1人ごとに作る
- 証明者(勤務先)ごとに作る。A社で6年、B社で4年なら2枚になる
奈良県の記入例のQ&Aでは、個人事業から法人成りした場合も、使用者が別になるため、個人の期間と法人の期間で2枚に分けるとされています。
各欄の書き方
| 欄 | 書き方のポイント |
|---|---|
| 建設工事の種類 | 証明したい業種名を書く(例:内装仕上工事)。 |
| 証明者 | 技術者を雇っていた会社または個人事業主。自分が個人事業主だった期間は、自分自身が証明者になります。 |
| 被証明者との関係 | 証明者から見た技術者の立場(例:従業員、元従業員、本人)。 |
| 技術者の氏名・生年月日 | 営業所技術者になる人の氏名と生年月日。 |
| 使用された期間 | その証明者のもとで働いていた期間。 |
| 職名 | 所属していた部署名など(例:工事部、施工管理課)。 |
| 実務経験の内容 | 従事した主な工事名を具体的に書く。最も差がつく欄です(下で詳しく説明します)。 |
| 実務経験年数 | 行ごとの期間。 |
| 合計 | 「満〇年〇月」の形で合計を書く。 |
| 使用者の証明を得ることができない場合はその理由 | 会社の解散や疎遠などで証明が得られない場合に理由を書く。 |
「実務経験の内容」は工事名を具体的に
奈良県の記入例では、「大路邸新築工事」のような具体的な工事名は可、「建築工事」のような書き方は不可とされています。どんな工事に、どんな立場で関わったのかが読み取れるように書くのがポイントです。
秋田県の記載方法では、1行に1件の工事名と、従事した業務や役割を書くのが基本です。連続した期間をまとめて書くときは、1行を1年以内で区切り、その期間の代表的な工事名を書いて、ほかの工事は件数だけ(「他〇件」)示す方法が認められています。
記入例(内装仕上工事・10年の場合)
A社で10年、内装工事に従事してきた技術者の例です(工事名・会社名は架空です)。
| 職名 | 実務経験の内容 | 期間 |
|---|---|---|
| 工事部 | 〇〇ビル3階事務所内装改修工事(軽量鉄骨下地・ボード張り)他5件 | 平成28年4月〜平成29年3月 |
| 工事部 | △△クリニック新築工事のうち内装工事(天井・壁仕上げ)他4件 | 平成29年4月〜平成30年3月 |
| 工事部 | □□マンション共用部内装リニューアル工事(床仕上げ)他6件 | 平成30年4月〜平成31年3月 |
| (同じように1年ごとに10行) | ||
| 合計 | 満10年0月 | |
秋田県の記載方法では、「10年の実務経験なら少なくとも10行」が必要とされています。
年数の数え方(月単位)
実務経験は、実際に工事に携わった期間を月単位で合計します。秋田県の記載方法では、次のように数えるとされています。
- 1か月に満たない従事でも1月と数える
- 同じ月に複数の工事に従事しても、その月は1月
- 始めの月も含めて数える(4月〜同年8月=5月、1月〜翌年3月=15月)
- 前の工事の終わりと次の工事の始まりが同じ月なら、その月は1回だけ数える(1月〜6月と6月〜12月=12月)
- 10年の実務経験は120月分が必要
まとめて書けるのは、工事に従事していない月が1か月もない期間に限られます。途中に1か月以上の空白がある期間は、まとめずに分けて書く必要があります。なお、10年は連続している必要はなく、通算で足ります(奈良県Q&A)。
証明書の中身を裏付ける資料
実務経験証明書は、書いただけでは認められません。書いた内容を、次のような資料で裏付けます。
| 確認されること | 主な資料の例 |
|---|---|
| 証明者が建設業許可を持っていた期間 | その期間の建設業許可通知書、許可証明書など |
| 許可を持っていなかった期間 | 工事の請負契約書、注文書・注文請書、請求書など |
| その会社に在籍していたこと | 厚生年金の被保険者記録照会回答票、雇用保険の被保険者証など |
工事資料の件数は、都道府県によって大きく違います。秋田県は証明した工事について「1年につき1件以上」(1件の工事が1年を超える場合は工事ごと)としていますが、山梨県のように実務経験は月ごとの資料を求める県もあります。また秋田県では、土木一式工事・建築一式工事の場合は、許可の有無にかかわらず実務経験に数えたすべての工事について資料が必要とされています。
県ごとの違いは、群馬県(1年に1件)、埼玉県(3か月ルール)、山梨県(実務経験は各月1件)の記事も参考にしてください。
前の会社に証明してもらえないときは
- 会社が解散・倒産している:奈良県Q&Aでは、原則として当時の役員が「元役員」として証明者になり、理由欄に「使用者が解散したため」と書くとされています。
- 疎遠で頼めない:理由欄に「疎遠のため」などと書く方法が示されていますが、その場合も裏付け資料は原則必要です。
- 資料がまったく残っていない:奈良県Q&Aでは、証明書類がなければ営業所技術者にはなれないとされています。退職前に、関わった工事の注文書の控えなどを確認しておくと安心です。
実務経験に数えられないもの
- 雑務だけの経験:秋田県の記載方法では、建設工事の雑務のみの経験は含まれないとされています。一方、設計技術者として設計に従事した経験、現場監督の経験、土工や見習いの経験は含まれます。
- 資格が必要な工事の無資格期間:電気工事や消防施設工事の一部のように資格が必要な工事は、免状等の交付を受けた後の経験しか数えられません。
- 同じ期間の二重計算:同じ期間を2つの業種で数えることはできません。奈良県Q&Aでは、10年の経験で土木工事業と舗装工事業の両方の技術者にはなれないとされています(とび・土工工事業から解体工事業への経過措置などの例外があります)。
- 社会保険に未加入だった期間など:奈良県Q&Aでは、法人に勤めていても社会保険未加入の期間や被扶養者だった期間は数えられないとされています。扱いは県によって異なるため、申請先で確認が必要です。
よくある書き間違いチェックリスト
- □ 工事名が「内装工事」「建築工事」など一般的な言葉だけになっていないか
- □ 証明したい業種と、書いた工事の内容が合っているか(例:塗装工事業の証明に防水工事を書いていないか)
- □ 空白の月がある期間を、1行にまとめて書いていないか
- □ 別の業種の証明書と、同じ期間が重なっていないか
- □ 合計が必要な月数(10年なら120月)に足りているか
- □ 勤務先ごとに証明書を分けているか(個人事業と法人も別)
- □ 書いた工事について、申請先が求める件数の資料がそろうか
よくあるご質問
一人親方として請けていた期間は、誰が証明しますか?
個人事業主として自分で請けていた期間は、自分自身が証明者になります(奈良県Q&A)。その期間の工事は、注文書や請求書、確定申告書などで裏付けます。一人親方の進め方は個人事業主・一人親方の建設業許可でも解説しています。
資格試験に合格してから〇年、というルートの場合は?
施工管理技士の第一次検定合格後の実務経験などで要件を満たす場合は、合格後の経験だけを書きます(秋田県の記載方法)。資格ごとのルートは営業所技術者の要件と資格一覧をご覧ください。
押印は必要ですか?
押印の要否や、電子申請(JCIP)での扱いは申請先によって異なります。最新の手引きを確認してください。
他にどんな書類が必要ですか?
申請全体の書類は建設業許可の必要書類一覧にまとめています。
実務経験証明書の作成で迷ったら
実務経験証明書は、工事名の書き方や月数の数え方、裏付け資料の組み立て方で、審査の進み方が大きく変わる書類です。建設業許認可・農地転用サポートセンターでは、お手元の注文書や請求書、年金記録などをもとに、何年分の経験を証明できるかを整理し、証明書の作成をお手伝いしています。まずはご相談・お見積りページから状況をお聞かせください。
参考(公的情報)
※この記事は2026年10月時点の公的情報をもとにしています。記載方法や必要な資料は許可行政庁ごとに異なるため、申請前に必ず最新の手引きをご確認ください。


