建設業許可は、要件さえ満たしていれば自分で申請することもできます。ただ、申請の手続きには、知らないと「受け付けてもらえない」「時間とお金が無駄になる」「最悪の場合、許可が取り消される」といった落とし穴がいくつかあります。
この記事では、建設業許可の申請手続きで特に注意したいことを5つに絞って解説します。必要書類の一覧は必要書類の記事、申請から許可までの流れは取得期間と流れの記事にまとめていますので、あわせてご覧ください。
注意点の早見表
| 注意点 | よくある失敗 |
|---|---|
| 1. 申請先を間違えない | 大臣許可なのに都道府県の窓口へ持って行く/古い手引きで書類を作る |
| 2. 申請中は「許可業者」ではない | 申請しただけで500万円以上の工事を契約してしまう |
| 3. 営業所の実体を示せるようにする | 自宅の一室で、居住部分と区切られていない/看板がない |
| 4. 手数料は不許可でも戻らない | 要件の確認が不十分なまま申請し、取下げで9万円を失う |
| 5. 虚偽の記載・名義借りは絶対にしない | 経験年数を水増しする/勤務実態のない人を技術者にする |
注意点1:申請先と申請方法を間違えない
建設業許可の申請先は、営業所がどこにあるかで決まります。
- 営業所が1つの都道府県にだけある:その都道府県の知事許可。都道府県庁の建設業担当の窓口に申請します。
- 営業所が2つ以上の都道府県にある:国土交通大臣許可。主たる営業所(本店など)を管轄する地方整備局に申請します。
大臣許可の申請は、以前は都道府県を経由して出していましたが、令和2年4月1日から地方整備局へ直接提出する方法に変わりました。関東地方整備局も「都道府県の窓口ではなく」直接提出するよう案内しています。どちらになるかの考え方は知事許可と大臣許可の違いで詳しく解説しています。
申請の方法も、行政庁によって違います。窓口への持参、郵送、電子申請(建設業許可・経営事項審査電子申請システム、JCIP)のどれが使えるか、受付時間は何時までかを、事前に確認しておきましょう。たとえば埼玉県の手引きでは、紙の申請は原則として持参で受け付け、電子申請は令和5年1月10日から始まったと案内されています。
手引きは必ず最新版で
都道府県の「建設業許可の手引き」は、法改正や様式の変更にあわせて毎年のように改訂されます。古い版の様式や確認資料で作ると、受け付けてもらえないことがあります。申請する前に、申請先のホームページで最新版を確認してください。
注意点2:申請中は、まだ「許可業者」ではない
申請書を出して受け付けられても、許可が下りるまでは許可業者ではありません。審査の間に、1件の請負代金が500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上、または延べ面積150㎡以上の木造住宅)の工事を請け負うと、無許可営業になります。
- 受付印のある控え(副本)は「申請したこと」の控えであって、許可の代わりにはなりません。
- 許可が下りるまでの期間は行政庁によって違います。山形県の手引きでは、書類が全部そろってから1か月程度とされていますが、審査の過程で内容確認に時間がかかり、延びることもあるとされています。
- 許可が必要な金額の工事は、許可通知を受けてから契約するよう、元請や発注者とスケジュールを調整しておきましょう。
「許可が下りるまで工事を分割して契約する」のも、正当な理由がなければ合計額で判断されるため認められません。500万円の判断基準は建設業許可の500万円ルール、無許可営業の罰則は無許可営業の罰則をご覧ください。
注意点3:営業所の「実体」を示せるようにしておく
建設業許可の営業所は、名前だけの事務所では認められません。東京都の手引き(令和5年度版)では、営業所の要件として、次のようなことが挙げられています。
- 電話・机・各種の事務台帳などを備え、契約の締結などができるスペースがあること(業務用の携帯電話も可)
- ほかの会社や個人事業主の事務所とは、間仕切りなどで明確に区分されていること
- 自宅にある場合は、居住部分と適切に区別されているなど、独立性が保たれていること
- 営業用の事務所として使う権原があること(自己所有、または賃貸借契約など。住居専用の契約は原則として認められない)
- 看板や標識などで、外から建設業の営業所だとわかること
これを確かめるため、多くの行政庁で営業所の写真の提出が求められます。山形県の手引きでは、建物の外観、入口付近、営業所の内部などを撮影した写真を出すこととされています。東京都の手引きでは、申請の内容から営業所の実態がわからない場合、立入調査を行うことがあるとされています。
自宅を営業所にする一人親方の方は、仕事用のスペースを区切り、表札や看板を出してから写真を撮るようにしましょう。進め方は個人事業主・一人親方の建設業許可でも解説しています。
注意点4:手数料は、不許可や取下げでも戻らない
知事許可の新規申請では9万円、大臣許可の新規申請では15万円(登録免許税)がかかります。この手数料は審査そのものにかかる費用なので、許可が下りなかった場合や、申請を取り下げた場合でも返ってきません。山形県・埼玉県・東京都の手引きでも、還付されない旨が明記されています。
つまり、「とりあえず出してみて、だめなら直す」という進め方は、お金の面でも時間の面でも損になります。申請の前に、次のことを確認しておきましょう。
- 経管(常勤役員等)の経験を、登記事項証明書や確定申告書で途切れなく示せるか(経管の5パターン)
- 営業所技術者の資格、または実務経験を書類で証明できるか(実務経験証明書の書き方)
- 財産的基礎(自己資本500万円以上など)を満たしているか(財産的基礎の記事)
- 役員などが欠格要件に当たらないか(欠格要件の記事)
判断に迷う点は、申請先の窓口に事前相談するのが確実です。審査の途中で疑問が出れば、追加の書類を求められることもあります(埼玉県の手引き)。費用の全体像は建設業許可の費用で解説しています。
注意点5:虚偽の記載や名義借りは、絶対にしない
「経験が少し足りないから年数を多めに書く」「実際には勤めていない資格者の名前を借りる」といったことは、絶対にやめてください。
- 許可が下りない:申請書や添付書類の重要な事項に虚偽の記載があったり、重要な事実の記載が欠けていたりすると、欠格要件に当たり許可されません(建設業法第8条)。
- 罰則がある:虚偽の記載をした申請書を提出すると、6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります(建設業法第50条)。
- あとから取り消される:不正な手段で許可を受けたことがわかると、許可は取り消されます。取り消された日から5年間は、新たに許可を受けることもできません。
要件が足りないときは、ごまかすのではなく、別のパターンで満たせないかを検討するのが近道です。たとえば経管は5年の役員経験以外のルートもあり、営業所技術者は資格や学歴で必要な年数が短くなる場合があります(営業所技術者の要件と資格一覧)。
許可が下りた後も、手続きは続きます
許可を受けたあとは、次のような手続きや義務が始まります。申請のときに提出した書類の控え(副本)や許可通知書は、更新や変更届、経営事項審査などでも使うので、なくさないように保管しておきましょう。
- 事業年度が終わるごとに、4か月以内に決算変更届を出す(決算変更届)
- 役員や営業所技術者が変わったら、期限内に変更届を出す(変更届の期限一覧)
- 営業所と工事現場に許可票(看板)を掲げる(許可票の掲示義務)
- 5年ごとに更新する(更新手続き)
申請前のチェックリスト
- □ 営業所の所在地から、知事許可か大臣許可か、申請先を確認した
- □ 申請先の最新の手引きと様式をダウンロードした
- □ 持参・郵送・電子申請のどれで出すか、受付時間を確認した
- □ 許可が必要な金額の工事は、許可通知の後に契約する段取りにした
- □ 営業所の写真(外観・入口・内部など)と、使用権原がわかる書類を用意した
- □ 経管・営業所技術者・財産的基礎・欠格要件を、書類で確認した
- □ 書類の内容に、事実と違うところがない
よくあるご質問
建設業許可の申請は、自分でもできますか?
できます。申請者本人が書類を作って申請することに制限はありません。ただし、経管や営業所技術者の経験を証明する書類の組み立てには時間がかかることが多く、不備があると審査が延びたり、手数料が無駄になったりします。本業との兼ね合いで、行政書士に依頼するかを判断するとよいでしょう。
申請してから許可が下りるまで、どれくらいかかりますか?
行政庁によって違います。山形県の手引きでは、知事許可は書類が全部そろってから1か月程度とされていますが、大臣許可は知事許可より長くかかるのが一般的です。行政庁ごとの目安は取得期間と流れの記事をご覧ください。
申請中に500万円以上の工事の依頼が来たら、どうすればいいですか?
許可が下りるまで契約を待ってもらうのが原則です。工事を分けて500万円未満にする方法は、正当な理由がなければ合計額で判断されるため使えません。許可の見込み時期を伝えて、スケジュールを調整しましょう。
申請手続きに不安がある方へ
建設業許認可・農地転用サポートセンターでは、申請先の確認から、要件の当てはめ、証明書類の収集、窓口とのやりとりまでをまとめてお手伝いしています。「この経歴で許可が取れるか」の判断だけでも構いません。まずはご相談・お見積りページから状況をお聞かせください。
参考(公的情報)
- 国土交通省関東地方整備局「建設業の許可について」
- 国土交通省中国地方整備局「大臣許可業者のみなさまへ大事なお知らせ」(令和2年4月1日からの提出先)
- 山形県「建設業許可申請の手引き」(令和8年4月)
- 埼玉県「建設業許可申請・届出の手引き」はじめに
- 東京都「建設業許可申請の手引」(令和5年度版)
- e-Gov法令検索「建設業法」
※この記事は2026年10月時点の公的情報をもとにしています。受付方法や必要な資料は許可行政庁ごとに異なるため、申請前に必ず最新の手引きをご確認ください。


